基礎情報
シンガポールテレコム(SGX: Z74)は1879年創業の同国最大の通信会社であり、アジア第二位の規模を誇ります。アジア首位のチャイナモバイルが中国国内に特化していることを考えれば、シンガポールテレコムが実質的にアジアで最も影響力のある通信会社と言えるでしょう。同社は携帯電話やインターネット関連事業を中心に情報通信分野のあらゆる事業を手掛けています。シンガポールテレコムの最大の特徴は国外の通信事業への戦略的投資にあります。世界25ヶ国で展開し、携帯通信の加入者数は約7億人を数えます。
銘柄分析
事業地域はアジア・アフリカの広域を網羅しており、国外で利益の70%を稼ぐまで成長しています。投資先に開発途上国が多いことから、顧客数と売上は大きく伸びてくると思われます。主要関連会社には各国の業界トップ級が名を連ねます。オーストラリア市場シェア2位オプタス。インド・南アジア・アフリカで展開するバーティエアテル (インド首位)。インドネシア最大手テレコムニカシの携帯子会社テレコムセル(同国首位)。フィリピン業界2位のグローブテレコム。タイで圧倒的シェアを誇るAIS。AISの親会社であるインタッチホールディングス。シンガポールテレコムは投資を拡大する時期にあり、アジアやアフリカの新興国とともに成長シナリオを描いているように見えます。
企業名 | 国名 | 株式保有率 | 市場占有率 | 国内順位 |
---|---|---|---|---|
AIS | タイ | 23% | 45% | 首位 |
バーティエアテル | インド | 40% | 24% | 首位 |
グローブテレコム | フィリピン | 47% | 48% | 首位 |
オプタス | オーストラリア | 100% | 29% | 2位 |
テレコムセル | インドネシア | 35% | 47% | 首位 |
インタッチ | タイ | 21% | - | - |
シングテル | シンガポール | 100% | 49% | 首位 |
業績の推移
業績の推移は、成熟企業の様相を呈しています。売上、営業利益、純利益ともにほぼ横ばいです。営業利益率は16%から18%のレンジで比較的安定しています。この水準は、米国を代表する通信会社AT&Tとベライゾンコミュニケーションズと同程度です。
BPSとEPSの推移
1株あたり純資産(BPS)、1株あたり利益(EPS)も業績の推移と同様に横ばいです。直近のBPSの推移は上昇傾向にありますが、「微増」の範囲内です。
配当と配当性向の推移
配当の推移から、経営陣が積極的に株主還元を試みている姿勢が見て取れます。1株あたり配当金(DPS)の長期トレンドを見ると、1994年から一度も普通配当を減配していないことがわかります。また、同期間中に特別配当も複数回出しています。
一方、毎年安定して増配する企業ではありません。過去15年間、10年間、5年間の平均増配率は8.62%、3.81%、1.03%と低迷しています。連続増配企業ではないものの、減配の無い安心感がシンガポールテレコムの魅力と言えるでしょう。
配当性向は70%を超える水準に入ってきています。低迷するEPSを改善していくことが喫緊の課題です。ただ、増配余力の心配をする水準ではなく、余程のことがない限り減配はないと考えています。
自社株買いと総還元性向の推移
総還元性向は配当性向に自社株買いに要した支出分を加算したものです。自社株買いはほとんど行われていません。シンガポールテレコムは、配当金の支払いによって株主還元を行っていることが明らかです。
キャッシュフローの推移
業績の推移と同様に、営業CFも安定した水準を維持しています。営業CFに対して二分の一程度が投資CFです。営業CFMは下降傾向にあるものの30%前後の高水準を維持している点はとても魅力的です。国内の携帯電話通信事業の行き詰まりから、シンガポールテレコムは海外展開やセキュリティ分野での事業開拓を急いでいます。これらの事業が花開き、営業CFを右肩上がりへ回帰させることができるかが今後のポイントです。
収益性と財務健全性の推移
株主資本利益率(ROE)は15%前後で安定しています。AT&TとNTTドコモのROEが10%前後であることを鑑みれば、まずまずの水準と考えてよいと思います。また、自己資本比率は60%前後の高水準にあり、レバレッジを抑えた経営と言えます。開発途上国での事業投資を行うシンガポールテレコムにとって、借入を極力抑えることは不可欠なのかもしれません。
株価と投資指標の推移
長期的に見れば株価は右肩上がりで留まるところを知りません。株価収益率(PER)も15%前後で安定しており、過熱感もあまりありません。また、増配が行われていないことから、配当利回りは低下傾向にあります。
投資方針
老舗の通信事業会社らしく、安定感のあるキャッシュフローが魅力。配当性向が高まっていることから、EPSの成長が待ち望まれます。投資国の経済状況によって短期的な業績のブレは想定されるものの、新興国の経済成長とともに成長する中長期的なシナリオには一点の曇りもありません。高配当を維持していることからも、株価の下落局面で買い増したいと思います。
投資実績
過去の投資実績や配当履歴を掲載しています。取引ごとの投資判断については個別記事でご紹介しています。
配当履歴
日付 | 配当金 | YOC | 株数 | 投資額 |
---|---|---|---|---|
2018年1月18日 | 11,601 | 2.05% | 1,800 | 567,202 |
2018年8月21日 | 20,337 | 2.24% | 3,000 | 905,895 |
2019年1月17日 | 15,036 | 1.45% | 3,500 | 1,033,870 |
2019年8月21日 | 28,998 | 2.25% | 4,500 | 1,287,213 |
2020年1月17日 | 19,755 | 1.53% | 4,500 | 1,287,213 |
2020年8月20日 | 2,318 | 1.16% | 700 | 200,223 |
2021年1月19日 | 2,194 | 1.10% | 700 | 200,223 |
取引履歴
日付 | 取引 | 取得単価 | 株数 | 投資額 |
---|---|---|---|---|
2017年9月21日 | 買付 | 313.01 | 700 | 219,107 |
2017年10月24日 | 買付 | 317.89 | 300 | 95,367 |
2017年11月14日 | 買付 | 316.72 | 600 | 190,032 |
2017年11月22日 | 買付 | 313.48 | 200 | 62,696 |
2018年2月8日 | 買付 | 289.29 | 200 | 57,858 |
2018年2月20日 | 買付 | 278.08 | 300 | 83,424 |
2018年3月14日 | 買付 | 282.02 | 700 | 197,411 |
2018年8月20日 | 買付 | 255.95 | 500 | 127,975 |
2019年2月27日 | 買付 | 258.83 | 500 | 129,416 |
2019年3月12日 | 買付 | 247.85 | 500 | 123,927 |
2020年6月11日 | 売付 | 199.38 | -500 | -99,688 |
2020年6月11日 | - | - | - | -44,431 |
2020年6月16日 | 売付 | 193.81 | -1,000 | -193,814 |
2020年6月16日 | - | - | - | -92,233 |
2020年6月26日 | 売付 | 187.65 | -1,000 | -187,652 |
2020年6月26日 | - | - | - | -98,395 |
2020年7月8日 | 売付 | 190.06 | -1,000 | -190,062 |
2020年7月8日 | - | - | - | -95,982 |
2020年7月27日 | 売付 | 188.41 | -300 | -56,524 |
2020年7月27日 | - | - | - | -29,289 |
2021年01月12日 | 売付 | 189.30 | -700 | -132,508 |
2021年01月12日 | 確定 | - | - | -67,715 |
合計 | - | 0 | 0 | 0 |
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