2018-02-18

ゴジェック(GO-JEK)がインドネシアに帝国を作る日

先日、ジャカルタへ行く機会がありました。そこで目にしたのは、ゴジェック帝国の基礎が着々と完成しつつあるということでした。

市場を拡大するゴジェック

ご存知の方も多いかもしれませんが、インドネシアにゴジェック(GO-JEK)というIT会社があります。ゴジェックはUBERのようなアプリを運営する会社ですが、自動車ではなくバイクタクシーをメインに運営していることに特徴があります。ドライバー数はインドネシア国内に40万人を擁し、50都市をカバーしています(2016年)。狭い路地でも小回りが利き、渋滞をすり抜けられるバイクタクシーの特性をいかしたサービス展開が消費者の支持を集めているようです。

また、東南アジアのタクシー市場で高いシェアを握るシンガポールのグラブ(GRAB)もインドネシアで2015年にサービスを開始しており、これから市場競争が激化するものと思われます。ただ、グラブが5都市での展開に留まっていることを鑑みれば、スタートダッシュを華麗に決めたゴジェックの優位性が際立って見えます。

ゴジェックの主要サービス

主要サービスをいくつかピックアップしてみました。インドネシア人の知人の言葉を借りれば、「生活に必要なことはすべてゴジェックで完結する」ようです。これに加えて、マッサージやメイドの派遣もワンクリックで可能となっています。

英名和名概要
GO-RIDEゴーライドバイクタクシー版UBER。ドライバーは40万人。
GO-CARゴーカーUBERと同じモデル。自動車の手配。
GO-FOODゴーフードレストランからバイクタクシーが出前。
GO-MARTゴーマート食材をバイクタクシーが配達。
GO-SENDゴーセンドバイクタクシーが郵便配達。
GO-BOXゴーボックス大き目の荷物を配達。
GO-TIXゴーティックスコンサートなどのチケットを手配。
GO-MEDゴーメド医薬品の配達。

ゴジェック流、信頼の作り方

ゴジェックの拡大戦略の素晴らしいところは、インドネシア政府とガッチリ方を組んでいることです。誤解を恐れずに言えば、インターネットを使ったスタートアップの多くが、労働者の権利を後回しにする傾向があります。

たとえば、「ゴジェックを使っているドライバーが社会保障に加入しているか」などは、経営を軌道に乗せるために躍起になっている起業家は二の次にしてしまうことが多いです。実際、「私たちはアプリを提供しているだけで、雇用主ではないのだから労働者の権利を考慮する必要は無い」と言ってのける起業家もどこかにいましたね。

では、ゴジェックはどうでしょうか。インドネシア政府の社会保険実施機関(BPJS Employment)とガッチリタッグを組んで、ドライバーの加入率を上げるための政策とキャンペーンに協力しています。

世界中から相次ぐ出資

こうしたゴジェックの快進撃を前に、インドネシア国内外から出資が相次いでいます。インドネシアで自動車の製造販売を手がける財閥大手アストラインターナショナル。中国のIT大手テンセントホールディングスと電子商取引のJDドットコム。シンガポール政府系ファンドであるテマセクホールディングス。そして、世界のグーグル。

しかし、残念ながらゴジェックは株式を上場していないため、個人投資家の私たちは指を加えて見ているしかありません。日経新聞(2月12日付)では企業価値を18億ドル程度としていますが、時価総額が100億ドルを越える日も遠くないブランド力だと感じています。

3年以内に新規株式公開(IPO)を目指しているとの報道もあり、とても楽しみにしている企業の一つです。

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