2019-11-24

テスラの迷走

テスラ(NASDAQ: TSLA)の業績が本格化するのは、トヨタ自動車の主力が電気自動車となった時だと考えています。そうなれば世界中のガソリンスタンドで充電が可能となり、電気自動車の先駆者としてテスラのブランド力も上がるはずです。

しかし、テスラがトヨタ自動車と戦うのは間違っていると考えます。つまり、大衆向けの電気自動車市場で戦うには極めて分が悪いと思われます。カムリ、カローラ、プリウスのブランド力は世界で圧倒的な地位にあり、燃料をガソリンから電気に置き換えることでブランド力の衰退が起こるとは考えにくいためです。また、ピックアップトラック市場にも同様のことが言えます。ハイラックス、ランドクルーザーといったトヨタ自動車のブランドは、アジアはもちろん、アフリカの奥地や紛争地でも圧倒的な強さを持ちます。

では、どういった市場でテスラは戦うべきなのでしょうか。一つ目のポイントは、ポルシェやランボルギーニといった高価格帯市場を狙うことです。中間層はデザインよりも価格や維持費に重きを置きます。世界中で生産し、アフリカでも修理用の部品が調達できるトヨタ自動車のようなサプライチェーンを構築することは、参入障壁が極めて高いビジネスモデルとなります。新規参入者であるテスラが、狙うべきは維持費を顧みない高所得者層です。

二つ目のポイントは、ソフトウェアです。従来の自動車産業はIT化が遅れています。たとえば、車内で使用するGPSはグーグルマップ、音楽はスポティファイに市場を奪われています。トヨタ自動車が研究を行っている自動運転機能も、グーグルバイドゥなどのIT企業が強みを持つ分野です。こうしたソフトウェア市場でテスラは商機を見出すことができるかが、もう一つの勝負となります。

防弾仕様のピックアップトラックのプレゼンが失敗したことで株価が急落したテスラですが、業績の今後を占う意味ではもっと根本的な経営戦略を見なければなりません。現時点は、私はテスラの成長戦略は迷走していると見ています。

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