データは21世紀の石油か航空機か
20世紀の株式市場を牽引したのは石油銘柄でした。もちろん、IBMやマイクロソフトといった情報技術産業が100年の終わりに市場を牽引したことも事実です。しかし、20世紀初頭から一世紀にわたって価値を創造し続けたのはエクソンモービルなどの石油産業でした。
21世紀の株式市場を牽引するのはどの産業でしょうか。「データが21世紀の石油となる」といった声が聞こえ始めて久しいです。たしかに、アルファベットはGmailのやり取りやグーグル検索を通じ、フェイスブックはソーシャルネットワーキングサービスを通じ、極めて個人的な嗜好や人間関係を把握することができています。また、アリババのようにアリペイを通じて個人の支払情報を集めることができます。
こうした世の中の流れは21世紀に生きる私たちにとって避けることのできない必然となっていくでしょう。その中でデータを保有する意義は、20世紀に世界経済の血液となった石油に匹敵するものがあります。
しかし、私たち投資家はデータが同時に航空機のような墜落リスクをはらむものであることを認識しつつあります。つまり、データ管理に潜む漏洩リスクです。
たとえば、信用情報を管理するエキファックスは2017年に1億4,000万人の機密情報を漏洩しました。信用調査機関として致命的な不祥事です。これによって株価は大きく下落し、会社の信用も著しく毀損したことは言うまでもありません。このように、一度の情報漏洩が信頼の失墜に繋がるリスクを持ち合わせているのが、データ管理の難しさです。
ただし、情報漏洩リスクは21世紀においてはあまり大きな損失とならない可能性もあります。これを言っては元も子もありませんが、データ漏洩に21世紀の人々が慣れ始めていると、私は見ています。実際、エキファックスの株価は戻り、フェイスブックやアルファベットも常に情報漏洩疑惑を掛けられながらも然程大きな損失は被っていません。石油流出事故のような実害が目に見えないため、データ漏洩は実際には大したリスクではないのかもしれません。個人的にはとても嫌ですけどね。